事業承継税制のメリット・デメリット
事業承継税制とは、後継者が中小企業の株式を相続や贈与で引き継いだときに、本来支払うべき多額の相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。猶予された税金は、将来的に免除されることを前提した制度です。
中小企業の事業承継が喫緊の課題であり、日本経済に与える影響が非常に大きいことを、国は明確に認識しました。 経営者の高齢化が急速に進展しており(年齢分布のピークが60歳代半ば)、これを放置すると10年間で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われると試算されています。 しかし、これまでの事業承継税制は、制度ができて8年ほど経過していますが、これまでの累計で全国で1,965件にすぎませんでした。 今回、平成30年度税制改正により、この深刻な事業承継問題に対処するため、事業承継税制の特例措置を時限的に創設することで、世代交代を後押しすることになりました。具体的には、今後5年以内に承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う経営者を対象に、現在の事業承継税制を抜本的に拡充した新制度を創設されました。 この制度を有効に活用することで、多くの中小企業のより円滑な事業承継を可能にします。
メリットは、対象株式分の贈与税・相続税の猶予されます。この猶予された税額は、(途中で取消しにならない限りは、)最終的には、後継者の相続発生など、一定の事由が発生することで免除されます。すなわち、対象株式の贈与税・相続税の負担がゼロになります。これが、この制度を利用する上での唯一のメリットでとなります。
逆にデメリットは、①煩雑な事務手続きがあげられます。事務負担ですが、以前と比べると少しずつ軽減されてきていますが、まだまだ負担が重いものとなっています。特に、資産保有型会社、資産運用型会社に該当しないことを証明するための関連書類の比重が大きく、平成29年度税制改正により、事業実態があることを証明できれば、提出書類を削減できるようになり、事務負担の軽減につながっていますが、常時雇用従業員数が5人未満の会社の場合には、申請書への記載項目が多いものとなっています。また、都道府県によって、提出が求められる書類の量や種類、確認の厳格さに大きなばらつきがあり、場合により、かなり多くの添付書類の収集・提出が義務付けられます。 従業員が少ない、事業拠点が少ない小規模の会社ほど、大変になっています。また、適用から5年経過後は3年おきの継続届出になりますが、必要書類はそれほど変わらないため、重い事務負担は一生続くことになります。 ②事業承継税制は非常に複雑な制度となっています。ここでは詳細な説明は省略します。③事業承継税制の最大のデメリットは、半永久的に続く取消リスクです。一生続くことになります。事業承継税制の適用を受けた企業は、常に取消リスクと向き合い続けなければなりません。取消事由も細かく規定されております。例えば、代表的な取消事由として、その会社が資産保有型会社というものに該当すると、取消となり、後継者個人が、猶予されていた税額の全額を、利子税とともに、2か月以内に支払わなければなりません。資産保有型会社とは、賃貸用不動産とか現預金とか貸付金などの割合が多い(70%以上)会社です。以前は、一日でも資産保有型会社等に該当すると取消しとなりましたが、平成31年度税制改正により、やむを得ない事情があれば、半年の猶予が設けられることになりました。そのため、事業活動のために借入れをして一時的に現預金が増加したとき、資産を売却して一時的に現預金が増加したときなどは、やむを得ない事情があるものとして半年の猶予が認められます。しかし、例えば、卸売業や住宅販売業の会社が不景気で売上が激減してしまい、売掛、買掛、在庫が減少し、相対的に現預金の割合が多くなってしまったり、あるいは、銀行の支店の成績の都合で期末に多額の借入の要請に応じてしまったり、たまたま退職が重なり一時的に従業員数が5人を下回ってしまうようなことがあったとしても、これらの事情が偶発的な事由と認められるかどうかは難しい問題です。加えて、継続届出書の提出は1年に一回又は3年に一回です。半年の猶予ということは継続届出書を作成した時点で判明しても手遅れということに変わりありません。また、継続届出書の提出遅れも取消事由です。一日でも遅れると利子税とともに全額支払いが要求されます。継続届出書の提出は、適用から5年経過すると3年に一回となり、事務負担の軽減が図られているように見えますが、提出忘れを誘発する可能性の方が高いと考えます。
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