遺留分・遺留分侵害額請求権とは?
■遺留分とは
相続は基本的に故人の遺志を尊重するため、遺言書があった場合は基本的にその遺言の内容が最優先されます。しかし例えば、遺言書に「全ての財産を愛人に譲る」趣旨の内容が記載されていたとすれば、残された家族はこれまでの生活を維持していくのが困難になります。
そこで民法は、一定の相続人が最低限度相続できる割合を「遺留分」として定めています。たとえ上記のような遺言書があったとしても、遺留分を主張すればその権利の範囲の財産を取り戻すことができます。
遺留分制度は以下で指摘するように、平成30年度にいくつか法改正がなされました。この法改正の施行日は2019年(令和元年)7月1日です。
■遺留分が認められる相続人と遺留分の割合
遺留分が認められている相続人は、「兄弟姉妹を除く法定相続人」とされています(改正民法1042条1項柱書)。つまり相続人のうち、配偶者、子ども(代襲相続の場合は孫)、直系尊属(父母や祖父母)に遺留分が認められています。
遺留分の割合は相続人の属性や組み合わせによって、以下のように異なります(同条1項各号、2項、900条、901条参照)。
・配偶者のみ・・・配偶者:2分の1
・配偶者と子ども・・・配偶者:4分の1 子ども:4分の1を人数で等分
・配偶者と親・・・配偶者:3分の1 親:6分の1を人数で等分
・配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者:2分の1 兄弟姉妹:なし
・子どものみ・・・子ども:2分の1を人数で等分
・直系尊属のみ・・・直系尊属:3分の1を人数で等分
・兄弟姉妹のみ・・・兄弟姉妹:なし
■遺留分の請求方法
以前まではこの遺留分を請求する権利を「遺留分減殺請求」と呼んでいましたが、平成30年の法改正で「遺留分侵害額請求」に変更されました。
遺留分侵害額請求を相手に通知する場合は、一般的に内容証明郵便を利用します。これは内容証明をつけて通知することで、いつどのような内容で請求したのかを証明することができるためです。
相手に通知を送った後は、具体的な遺留分金額を双方で話し合い、合意をしたら合意書を作成して、その内容に従った遺留分を金銭で受け取ることになります。平成30年の相続法改正で、遺留分の請求は金銭に対するものに限定されることになりました(改正民法1046条1項参照)。
遺贈や贈与を受けた者が、直ちに金銭を準備することができない場合は、裁判所に支払期限の猶予を求めることができます(改正民法1047条5項)。
この遺留分侵害額請求は、遺留分を請求できる者が「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から」1年以内に行使しなければ時効により消滅します(改正民法1048条前段)。また相続開始の時から10年経過したときも請求できなくなるので(同条後段)、注意しましょう。
■遺留分の算定対象となる財産
これまで、相続人に対する生前贈与はその時期を問わず、遺留分の算定対象となる財産と考えられてきました。
しかし今回の法改正により、相続人に対する贈与(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与に限る)は、原則として相続開始前の10年間にしたものに限定されることになりました(改正民法1044条3項、同条1項前段。贈与者・受贈者双方が、遺留分権利者に損害が生じることを知って贈与をしたときは、これより前にしたものも含まれます(同項後段))。
また相続人以外の者に対する贈与の場合は、原則として相続開始前の1年間にしたものに限り、価額に含まれることになります(同法1044条条1項前段。この場合でも、贈与者・受贈者双方が、遺留分権利者に損害が生じることを知って贈与をしたときは、これより前にしたものも含まれます(同項後段))。
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